大掛かりで大変だった作業
このQuickTime VRを作ることになったのは2000年開催されたインターネット博覧会の制作に加わったからです。
広告代理店、製作会社から、魚に関する制作依頼がきました。長崎県は魚がテーマで、何かいい素材はないかと持ちかけられ、僕はQuickTime VRを選んだのでした。3Dソフトで制作した魚をホームページで回すのは比較的簡単なのですが、あえて実写で制作することにしました。やはり実写のリアリティーを選んだのです。
まず魚を確保しなくてはいけません。長崎県のホームページですから、魚市場が協力してくれました。
予定された魚が水揚げされると、すぐ僕に連絡が入りました。その魚を魚市場へ取りに行き、五十川さん(懇意にしていただいている先輩のカメラマン)の事務所で形を整えて冷凍します。 (魚の形をとどめる方法はいくつか考えましたが、冷凍するのがベストだという結論に達しました。)
まず口から尻尾まで、太い針金で串刺しにします。小さな魚は簡単なのですが、さめなどは固くて、なかなかまっすぐ差し込めませんでした。そしてひれや尻尾が不自然にならないように、ピンなどで固定して冷凍しました。 大きい魚は一般の家庭用冷蔵庫では入らないので、専用の冷凍庫を購入しました。
ふぐはおなかがへこんでしまうので何とか自然な形になるように補正。口から空気を入れたりしましたが、冷凍するとへこんでしまう。あんまりいじると腐ってしまうので、ある程度の変形は目をつぶったものです。アンコウもおなかがぐにゃぐにゃで、形を整えるのに困難を極め、エイは尻尾の処理に困る。はもにいたっては蛇みたいになってしまうので考え込んでしまったのです。
2〜3日後、しっかり凍ったのを確認して撮影をしました。
そのころ高解像度の一眼レフのデジカメが高価だったため(キャノンのデジタル一眼レフが100万円ぐらいだったと思います。)、そこでオリンパスのデジカメ(12万円ぐらい)を購入して撮影をしました。
ビデオで撮影して一こまずつの写真を取り出しても良かったのですが、ビデオだと画像がわるく、魚はすべて白バックの切り抜きにしたかったので、角度を少しずつ変える"こまどり撮影"という手法をとりました。ちょうどアニメを作る時と同じ原理です。
VRにはいろんな種類の画像がありますが、前後、左右にぐりぐりうごく映像を作りたかったので、ターンテーブルと串刺しで回るセットを制作しました。ライトはフラッシュを使わず、写真電球を使用しました。フラッシュだと影や乱反射を調整するのが面倒なことと、購入したカメラに外付けのシンクロ接点がなく、ストロボを同調させるのに手間がかかるからです。
いよいよ撮影です。形が崩れないように急いで撮影。ライトで魚が解けないように注意しながら、15度づつ回転させて撮影。左右回転 24カット 前後回転24カットを撮影しました。書くと簡単なのですが、何種類かパターンを考えたのでこれは根気のいる作業です。
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針金が尻尾まで突き通せないので、途中まで差し込んだ。ただ、まわすときすべるので手で持ってまわす。 |
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15度ずつ手動で回転させる |
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倒れないようにゆっくり回転させる。 |
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串刺しにするので頭に穴が開いている。 |
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長い魚は針金を1本口から刺し、じゃ踊り状態で撮影。 |
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約25カット撮影 |
撮影した写真データを、白抜きですべて切り抜きました。一人ではとても無理なので、僕のスタッフとアルバイトの人を頼んでやっってもらったのですが、これが一番時間がかかったのです。
出来上がったデータをQuickTime VR Authoring Studioで加工 完成
出来は良いと思います。オリジナルはもっと大きいのですが、重たすぎるので掲載しているサイズにしました。
アートワークス 竹村倉二 |